はじめに

創業当初時の資本政策についてまとめられているとのことで、本書を読んでみた。 事前の期待通りマニアックな資本政策上の注意点と対策例がまとめられていると感じた。

その中でも、一般論的な言及について、思ったことをまとめる。

エクイティファイナンスのメリット/デメリット

「エクイティファイナンスによって得た資金は、複雑な事務フロー構築の手間も省いてくれます。」
p.36より引用

とても面白い記述だと思ったので、深く考えてみた。

そもそも、エクイティファイナンスとデットファイナンスの違いについて、今まで「リスク/リターンの割合が違う」程度に捉えていた。 この機会に、メリットデメリットを整理しようと思う。 パッと思いつく限り以下の通り。

  1. エクイティファイナンスの長所
  • 定期的な支出(利払い)がない。
  • 返済の義務がないという点で、リスクが低い。
  • 投資家とのコミュニケーションを通じて、信用を獲得できる。
  • 個人としての、担保や連帯保証などが不要。
  • 金融機関による実績重視の事業計画審査ではなく、投資家による未来重視の事業計画審査となる。すぐにROIを求められるわけではない。
  • 事業開始直後に支出がないため、当初キャッシュフローへの負担がない。
  1. デットファイナンスの長所
  • 経営に関して口出しされない。(議決権が流出しない)。
  • 借入金返済後の義務が一切ない。
  • 返済期間や返済額の選択肢が柔軟に設定できる。
  • 返済総額が借入時に確定している。
  • (事業が成功した場合の)支出が低く抑えられる。

冒頭の記述は、エクイティファイナンスのメリットの末尾にある項目に関連していると思う。 論理としては「投資家が事業開始直後のROIを求めていない」→「当初キャッシュフローへの負担がない」→「フリーミアムにする体力がある=事務フロー作成を後回しにできる」というメリットに繋がるのだ。

単年度課税とビジネスの実態乖離について

「ベンチャーキャピタルの株式の譲渡による所得は、給料などと違って、複数年にまたがる努力の成果だというところが特色です。」
p.319

こちらも新しい気づきである。 現状の会計制度上1年単位で納税しているが、そこがそもそも実情と乖離があるという点が新しい。 よくよく考えてみても、「学生時代にスキルを身に付けて、社会人で給料を稼ぐ」という点を見ても、実は複数年にまたがる努力の成果なのかもしれないと思った。

さいごに

分厚い本&2014年発行であるが、今読んでもタメになりそうな内容であった。