書評「図解 モチベーション大百科」〜ペアプロのための心理学〜

図解 モチベーション大百科 はじめに ペアプロなど、グループワークの進め方を考える際に、参考となる記載が多くあった。 すぐに取り込める部分をまとめる。 目標勾配 ゴールに近づけば近づくほどモチベーションが上がる。 終わりが見えそうなものごとについては、なかなかやめられない。 p.20 「すでにスタンプが押してあるスタンプカード」についての実験が書かれていた。 グループワークでも1日の終わりなど、定期的にゴールまでの残作業を確認することで、高いモチベーションを維持できそう。 同調状態 一旦みんなで同じ動きをしておくと、性格の合う合わないとは関係なく、その後の仕事で協力関係を生みやすい p.34 同じ行動をとった後は、協力的になり生産性が上がるという実験の説明。 別々に作業を分担する場合でもはじめに共同作業→あとから分担作業という流れを作ることで、生産性が上がると考えられる。 ここで大事なことは、前半の共同作業では、同じ作業をするということ。 大きめのシステム開発で例えるなら、初めは同じモジュールを一緒に開発(ペアプロ)、その後別々のモジュールを分担して開発、という流れが良いと思う。 証明型と習得型 "客観的理由"は自分でコントロールしようと思ってもできないものだから、「評価を落とさないレベル」で満足する p.40 「他者と比較した評価」と「自分の成長度合いによって評価」をされた場合、後者の方が努力しやすいという実験。 前述の目標勾配と合わせて、自分がどこまで進んだのかを定期的に確認することで、モチベーション面も業績面も高まると考えられる。 泥棒洞窟実験 一緒に楽しいことをするよりも、協力が必要な場面を共有した方が信頼関係が芽生えやすい。 親睦を深めさせようという試みは、かえってお互いの敵対心を増幅させる。 力を合わせなければ乗り越えられないような困難は、人の距離を縮める最高のチャンスなのです。 p.87 「一緒に楽しいことをする」グループと「一緒に共同作業をする」グループ。前者は強引に歩み寄らせたことによりかえって価値観の違いが際立ってしまう。一方で、後者は共通の敵(目標)ができたので結束が固まる、という実験の説明。 まさに、難易度の高いシステムをペアプロで開発するという作業は共同作業そのものである。 ピリオダイゼーション 人は「期限が見えないと、集中できない」ようにできています。 期限を決めるということは「いつ集中して取り組む時間を作るか」を決めることでもあります。 p.93 期限の有無でタスクの完了度が大きく変わるという実験の説明。 期限そのものが大事というわけではなく、優先順位や具体的な作業時間をうまく決めることが大事。 妥当性の論理 「自分の行動が他者にどういう影響を与えるか」という点を強調して伝えると、関心を持ってもらいやすい。 p.100 「自分へのデメリット」と「相手のデメリット」を伝えて、行動変容に影響があるかを調べた実験の説明。 「妥当性の論理」というネーミングが原落ちしないが、要するに相手に迷惑がかかると考えると、自分の行動を自然と見直すという話と理解。 さいごに 文章で要約したが、本書ではわかりやすい図解があったので、一度読んでみる価値がある本だと思う。 また、全ての項目に引用元の実験も明記されているのもありがたい。 図解 モチベーション大百科

December 30, 2021 · 1 min · Katataku

書評「クリーンアーキテクチャ」

構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 はじめに 発売当初からタイトルが気になっていた一冊。 その中でも、読んでみて共感した部分を中心にまとめる。 目的 ソフトウェアアーキテクチャの目的は、求められているシステムを構築・保守するために必要な人材を最小限に抑えることである。 p.34 とてもいい定義だと思う。 原理原則に基づく議論に対して、具体的な指針を与えてくれる。 再構築 自信過剰による再設計は、元のプロジェクトと同じように崩壊する。 p.40 自信過剰による再設計というのがとても絶妙である。 再設計をするというくらいなので、一度失敗をしてるのであろう。 その瞬間に思いつくのは「目の前の課題に対応した設計」だろう。 ただ、再構築が必要ということはそもそもがイマイチだったはずなので、ガラッと変える必要があるのである。 このガラッと変える、が難しいのだなと感じた。 構想力が劇的に高まる アーキテクト思考

December 8, 2021 · 1 min · Katataku

書評「構想力が劇的に高まるアーキテクト思考」

構想力が劇的に高まる アーキテクト思考 はじめに 発売当初からタイトルが気になっていた一冊。 その中でも、読んでみて共感した部分を中心にまとめる。 Why, What, How アーキテクト思考のWhy, What, Howを明らかにする。 p.20 見出しより引用。 よく使われている切り口であるWhy,What,How。 ただ、他の書籍ではWhy,How,Whatという順番で物事を整理していることが多い。 私は、このことに強烈に違和感を覚えていた。 本書の切り口である、Why,What,Howという順番で物事を捉えている方がいらっしゃることに嬉しさを感じた。 具体と抽象 アーキテクト思考の実態とは(略)「具体と抽象を行き来しながら新たな知的成果物を生み出していくこと」であると定義します。 p.105 さらに本書では、具体と抽象の例として以下を例示している。 カテゴリーと個別事象 目的と手段 全体と部分 よくあるフレームワークをまとめて考えられるメタフレームワークとでも呼べる考え方だなと思った。 上記記載後、読み進めていくとp.150で「第一原理思考」という用語が与えられていたので、さらに共感した。 フレームワーク アーキテクト思考 + フレームワーク = 全体構想と優先順位付け 非アーキテクト思考+ フレームワーク = 単なる機械的穴埋め p.118 これも強く共感したフレーズ。 フレームワークに登場する要素全てが等しく重要なのではなく、濃淡があるのである。 とくに、淡い要素については、考慮漏れがないかだけ確認できればいい。それがフレームワークの使い方であるべきである。 すこし違う話だが、ビジネスモデルキャンバスは埋める順番が決まっている。 順番に(優先順位をつけて)考えることまで含めてフレームワーク、となっている点がとてもいいと思った。 さいごに もやっと理解していたことをスッキリと整理してくれている一冊。 ビジネス入門書としてもいいのかなと思う。 構想力が劇的に高まる アーキテクト思考

December 6, 2021 · 1 min · Katataku

書評「予備校なんてぶっ潰そうぜ。」

予備校なんてぶっ潰そうぜ。 はじめに 最近はまっている「ゆる言語学ラジオ」で紹介されていたので気になった本。 起業の辛い面や、プロダクト開発の厳しい面を生々しい表現で書かれている。 心に残った言葉 急ごしらえの泥舟には、誰も一緒に乗ってくれない p.49 人がいなくなるたびに、いちいち心の柔らかい部分をさらけけ出して傷ついていたら、キリがないからだ。 p.79 立ち上げ当初の人集めの難しさを表した言葉。初期メンバーはスキルセットも価値観も進め方も人生の状態もマッチしていないと厳しいよね・・と感じた。 プログラムを産み落として神様になった後は、容赦のないフィードバックに打ちのめされ、泥水に叩きつけられる敗北感を味わう。 p.67 ソフトウェアエンジニアあるあるだと思う。 完成後の万能感と現実とのギャップ。。 さいごに 42Tokyoでは、ソースコードのピアレビューを行います。レビューを通して、成果物の誤りを適切に指摘してもらえるので、(多くの学びと引き換えに)現実を知ることができます😄 予備校なんてぶっ潰そうぜ。

November 24, 2021 · 1 min · Katataku

書評「起業のエクイティファイナンス」

起業のエクイティ・ファイナンス はじめに 創業当初時の資本政策についてまとめられているとのことで、本書を読んでみた。 事前の期待通りマニアックな資本政策上の注意点と対策例がまとめられていると感じた。 その中でも、一般論的な言及について、思ったことをまとめる。 エクイティファイナンスのメリット/デメリット 「エクイティファイナンスによって得た資金は、複雑な事務フロー構築の手間も省いてくれます。」 p.36より引用 とても面白い記述だと思ったので、深く考えてみた。 そもそも、エクイティファイナンスとデットファイナンスの違いについて、今まで「リスク/リターンの割合が違う」程度に捉えていた。 この機会に、メリットデメリットを整理しようと思う。 パッと思いつく限り以下の通り。 エクイティファイナンスの長所 定期的な支出(利払い)がない。 返済の義務がないという点で、リスクが低い。 投資家とのコミュニケーションを通じて、信用を獲得できる。 個人としての、担保や連帯保証などが不要。 金融機関による実績重視の事業計画審査ではなく、投資家による未来重視の事業計画審査となる。すぐにROIを求められるわけではない。 事業開始直後に支出がないため、当初キャッシュフローへの負担がない。 デットファイナンスの長所 経営に関して口出しされない。(議決権が流出しない)。 借入金返済後の義務が一切ない。 返済期間や返済額の選択肢が柔軟に設定できる。 返済総額が借入時に確定している。 (事業が成功した場合の)支出が低く抑えられる。 冒頭の記述は、エクイティファイナンスのメリットの末尾にある項目に関連していると思う。 論理としては「投資家が事業開始直後のROIを求めていない」→「当初キャッシュフローへの負担がない」→「フリーミアムにする体力がある=事務フロー作成を後回しにできる」というメリットに繋がるのだ。 単年度課税とビジネスの実態乖離について 「ベンチャーキャピタルの株式の譲渡による所得は、給料などと違って、複数年にまたがる努力の成果だというところが特色です。」 p.319 こちらも新しい気づきである。 現状の会計制度上1年単位で納税しているが、そこがそもそも実情と乖離があるという点が新しい。 よくよく考えてみても、「学生時代にスキルを身に付けて、社会人で給料を稼ぐ」という点を見ても、実は複数年にまたがる努力の成果なのかもしれないと思った。 さいごに 分厚い本&2014年発行であるが、今読んでもタメになりそうな内容であった。 起業のエクイティ・ファイナンス

November 11, 2021 · 1 min · Katataku